竹田Tキャンプ | 「考える」ことで地域と関わる、都市と地方の2拠点活動。

近年、「地方」は注目されています。例えば、様々な地域おこしの動きや、移住の取り組みは、今回記事を書いている東京在住の私でもニュースでよく目にする話題です。その傾向は、コロナ禍とも呼ばれる現状下で、リモートワークの普及によって仕事場の自由度が高くなったり、地方に移転している企業もあったりする今となっては、さらに加速していると言えるでしょう。

そんな中、福井県坂井市では、ある学生団体が「地方」との新しい関わり方を模索するような活動を行っています。

その団体、「竹田Tキャンプ」について説明をします。京都府京都市と福井県坂井市丸岡町竹田地区の二カ所に活動拠点を持ち、全国の大学生が竹田地区に集まって、夏休みや春休みの長期休暇を利用してプロジェクトの企画・実施を活動の核としています。プロジェクトの内容は各学生が地域の人と関わる中で興味を持ったことや、実現させてみたいと思ったことに基づくため、キャンプ内には多種多様なプロジェクトが含まれます。

竹田Tキャンプの”T”には色々な意味がありますが、最重要なのは”Think”です。学生が「考える」ことを重視するという、このキャンプの本質を言い表している名前だと言えます。そして、地域の人と協働する中で、地元と外部とのこれまでには無かった関係を築いておられます。

参加学生は1年生から大学院生まで幅広く、大学はもちろん学部学科もバラバラのため、様々な個性やキャラクターを持ったメンバーが集まっています。学生だけの活動ではなく地域の人たちと協働し、世代を超えた活動を実現されています。

今回はそんな竹田Tキャンプで、これまで学生代表を勤めてきた京都工芸繊維大学4年生の坂川啓太(さかがわ・けいた)さん、京都産業大学4年生の大澤穂高(おおさわ・ほだか)さん、同志社大学3年生の加藤里歩(かとう・りほ)さんと、現学生代表で京都工芸繊維大学2年生の濱田望実(はまだ・のぞみ)さんに話を聞きました。

5年間の活動から見えてくる、キャンプの変化。

(坂川さん)

「竹田Tキャンプが活動を開始してから、五年になります。もちろん初めから全て上手くいったわけではありませんでした。」

設立当初から参加している坂川さんは、何をして良いかわからなかったこと、そして地元からの理解を得られていない中での苦労が一年目にはあったと言います。竹田Tキャンプの活動に対し、地域の方に協働していただく方法がわからず、せっかく来てくれた方もどのようなアドバイスをすれば良いのか躊躇われていたそうです。

そんな中で、他キャンプのベテランメンバーからの応援を受けながら活動していたそうですが、状況が好転するきっかけとなったのは、活動二年目に京都府南丹市美山で活動していた姉妹キャンプである「京都Xキャンプ美山」のメンバーの何人かが「やりたいことを引っ提げて移籍してきた」こと、だと言います。他キャンプのメンバーがプロジェクトのノウハウを持ち込んでくれたために、「何をしていいかわからない」という状況を脱することができたのだとか。

(加藤)

「地域の方との距離も、活動年数を経るうちにどんどん変化してきました。最近では、Tキャンプの活動に参加してくれる人も増え、さらに最近では、地域の方から積極的に連絡が来るようになって嬉しく思っています。」

その理由は学生メンバーの人数が増え、地域の人が色々なメンバーの顔を知れるようになったことが大きいのではないかと話してくれました。

そうして、活動当初は全て手探りで進められてきたTキャンプですが、今ではメンバーも約60人まで増え、上級生と下級生が協力して活動しています。濱田さんは、そこから色々な技術や知識を学べると感じておられます。ただ和気あいあいとしているだけではない、互いに補い合えるような関係がそこにはあるようです。

ときには衝突することもある。プロジェクトを通した地域との関わり。

 竹田Tキャンプの特徴の一つは、先ほども述べたように「プロジェクトとしての活動を地域の中で進めていく」ことにあります。そこでは、地域の人たちとの関わりが重要になります。

(加藤さん)

「私は新幹線に乗っているとき、通り過ぎた町に住んでいる人のことをよく想像するのですが、竹田の人を知ってそれは想像ではなく実感を伴ったものになりました。一人の人間として自分に向き合ってくれる竹田の人たちを見せたいと思い、プロジェクトを考えました」

加藤さんは「しるす事」というプロジェクトを立ち上げて活動していました。これは「竹田の人の人生訓や経験をおみくじの形にして竹田外の方に届ける」というプロジェクトです。加藤さんは、キャンプに初めて参加した年には別のプロジェクトに関わっておられました。その際に竹田の人に話を聞く機会が多くあったそうですが、竹田にとって見知らぬ自分からの質問にも、真摯に答えてくれる人たちの温かさを感じたと言います。

一方、プロジェクトを進めていく中で、地域の人と意見がぶつかることもあります。

(大澤さん)

「地域には、プロジェクトに対して肯定的に見てくれる人もいれば、もちろんそうではない人もいます。活動を通して、都会である京都市出身の自分にとっては新しい経験として、地域の色々な面を見られたのかなと思います。」

大澤さんは、ジビエ(狩猟で得た野生鳥獣の食肉のこと)を資源として、猟師さんにお金が入る仕組みを模索する「じびえ事」に取り組んでいました。その中で、地域からのプロジェクトに対する否定的な意見もあったそうです。

「竹田にジビエ処理加工施設を作るという提案をしたのですが、臭いや排水など、生活に支障が出るのでは…など、色々な意見がありました。けれど意見の衝突も含めて、外部からその地域に接していては見えないものです。 内に入って生の声を聞いて、議論をして…。忖度せずに正直な意見をいただけたことは貴重な経験ですし、嬉しかった思い出です。」

 あくまでも竹田に外から関わりながらも、地域の方と協力しながら活動していくのが竹田Tキャンプの魅力なのです。

それぞれが、竹田Tキャンプから得たもの。

今回インタビューに答えてもらった四人のうち、坂川さん、加藤さん、濱田さんの三人に、「あなたにとっての竹田Tキャンプとは」という質問をしました。

この問いに対して坂川さんは「有意義な暇つぶし」と答えてくれました。「暇つぶし」というと、あまり良いイメージはないかもしれませんが、そこにはどんな意味が込められているのでしょう。

(坂川さん)

「Tキャンプでは、将来竹田に住まないだろう自分が、遊びにも何にでも使うこともできる自由な時間を使って竹田について考え実践しています。そこからは色々な視点・考えを得られますが、それがどこで生きるかは分からないという点で、僕の中では暇つぶしという感覚に近いと思っています。けれども、それはきっとどこかで生きてくる気がする。その意味で、有意義なものなのです。」

濱田さんにとって、キャンプは考える時間が多く、単純な楽しさだけではない濃い充実感があるのだそうです。そして、その分成長を促してくれる場だとも感じておられます。

また加藤さんは、プロジェクトを組み立てる中で「一から最後まで考えたこと」が、他では得難いものだったと感じているそうです。日常の中で、一つのことについて初めからじっくり考える機会は中々ありません。それだけに、考え続けた先にプロジェクトを満足のいくものとして完成させられた経験は貴重なものだったそう。その経験から、日常の中でものを見る視点が広がったと話してくれました。

このように、竹田Tキャンプは、大学生によるプロジェクトをきっかけとして、地域に影響を及ぼす活動であると同時に、参加した学生も様々な学びを得て成長しているのです。活動開始から5年を経た竹田Tキャンプが今後どのように変化していくのか、関わった学生は何を学んでいくのか、今後が楽しみです。

竹田Tキャンプは活動今年で6年目に入ります。徐々に地域とも親しくなり、OBOGが出始め、活動に深みが出てきています。

この記事を読んで、自分も参加してみたいと感じた方は、ぜひ下記のメールアドレスに連絡をしてみてください。

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【インタビュー】
神田智衣(早稲田大学2)
鳥潟かれん(早稲田大学4)
【文】
神田智衣(早稲田大学2)